相続した実家をそのまま放置している……そんな状況に、心当たりはありませんか？ 「まだ使い道が決まっていない」「時間が取れずに手がつけられない」など、さまざまな事情から手つかずになっている空き家は少なくありません。しかし、管理されない空き家は建物の老朽化や防犯面のリスク、近隣トラブルなど、思わぬ問題を引き起こすことがあります。放置しているうちに「資産」だった家が「負担」へと変わってしまうことも。そこでこの記事では、空き家を放置することの具体的なリスクや、管理することの重要性、そして無理なくできる対策方法についてわかりやすく解説していきます。
空き家を放置するとどうなる？
空き家を「とりあえずそのまま」にしておくことは、決して珍しいことではありません。しかし、管理されていない家は想像以上に早く劣化が進み、やがて近隣住民や地域社会にまで悪影響を及ぼす可能性があります。特に相続後、誰も住まずに何年も放置された家は、建物としての価値が下がるだけでなく、法的・経済的な問題の火種にもなりかねません。ここでは、空き家を放置したままにしておくことで具体的にどのようなリスクが発生するのかを、いくつかの代表的なケースに分けて解説します。
建物の老朽化が進み、資産価値が大きく下がる
人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷み始めます。湿気がこもりやすくなることでカビや腐食が進み、雨漏りやシロアリの被害が発生しやすくなるのです。また、水道やガスなどの配管設備も使われないことで劣化しやすくなり、いざ再利用や売却を検討したときには大規模な修繕が必要になるケースも珍しくありません。特に木造住宅では、わずか数年の放置で床が抜けたり、屋根が崩れたりすることもあります。このように、空き家を管理しないまま時間が経過すると、資産としての価値が大幅に下がり、「売りたくても売れない」「貸したくても修繕が必要」といった問題に直面することになります。
防犯・防災リスクが高まり、近隣とのトラブルの原因になる
人の出入りがない空き家は、外から見てもすぐにわかります。そのため、不法侵入や不審火、ゴミの不法投棄などのターゲットになりやすく、防犯面でのリスクが大きく高まります。また、庭の草木が伸び放題になると、害虫の繁殖や悪臭の発生につながり、近隣住民とのトラブルの火種になることも少なくありません。実際に、「隣の空き家が原因で蚊が増えた」「枯れ枝が風で飛んできた」といった苦情が寄せられ、最悪の場合には自治体が介入することもあります。防災面でも、老朽化した建物は地震や強風によって倒壊するおそれがあり、周囲に被害を与える可能性も否定できません。放置された空き家は、個人の問題にとどまらず、地域全体の安全や景観にも関わる重大な課題なのです。
維持費や税金の負担が続き、家計への影響が出る
空き家を放置していても、固定資産税や都市計画税などの支払い義務はなくなりません。むしろ、適切に管理されていない空き家は「特定空家」に指定されるリスクがあり、その場合は本来受けられる税制優遇（固定資産税の住宅用地特例）から外され、税負担が大幅に増えることもあります。また、建物が傷むほど維持管理や修繕のコストも高くなり、長期的に見るとかなりの出費となって家計を圧迫する原因になります。使っていないからといって「お金がかからない」わけではなく、「使っていないのにコストだけかかる」のが空き家の厄介な点です。放置するほどに経済的な負担が増すため、早めの対処が必要です。
相続人同士のトラブルに発展する可能性もある
空き家が放置されたままになっている背景には、相続人同士で意思がまとまらないという事情もよく見られます。誰が管理するのか、維持費はどう分担するのか、売るのか貸すのか、いずれ住むのか……など、こうした話し合いがなされないまま時間だけが経過すると、空き家の状態が悪化し、後々の手続きがさらに複雑化します。特に、相続登記が済んでいない場合や、相続人の誰かが放置に対して不満を抱えている場合、感情的な対立に発展してしまうケースもあります。空き家を放置することは、家だけでなく家族関係まで壊しかねない要因となるのです。問題が大きくなる前に、早めに管理や方針について話し合うことが重要です。
空き家を管理することで得られる安心とメリットとは？
空き家を放置するリスクは多くの人が危機感を感じているものの、「どうして管理が必要なのか」「何が変わるのか」といった点については、あまり具体的にイメージできない方もいるかもしれません。実は、空き家を適切に管理することで、建物の劣化を防げるだけでなく、将来的な活用の選択肢が広がったり、近隣住民との関係を良好に保てたりと、さまざまなメリットがあります。そこでここからは、少し手間をかけることで大きな安心につながる空き家管理の効果やメリットについて、具体的に見ていきましょう。
建物の状態を保ち、資産価値を維持できる
定期的に通風・通水を行い、外回りの点検や清掃をしておくことで、空き家の劣化を大幅に防ぐことができます。特に木造住宅の場合、湿気やシロアリ被害は放置による劣化の大きな要因ですが、適切な管理を続けることで被害の進行を防ぎ、長期間にわたって建物の良好な状態を保てます。結果として、いざ売却や賃貸を考えたときに「すぐに使える物件」として高く評価されやすく、資産価値の維持につながるのです。後から大規模修繕にお金をかけるよりも、日常的な管理でコストを抑えるという意味でも、大きなメリットがあります。
活用や売却の選択肢が広がる
空き家をきちんと管理していれば、将来的に「住む」「貸す」「売る」といったさまざまな選択肢を現実的に検討できます。例えば、定期的に手入れがされている家は内覧時の印象もよく、買い手や借り手が見つかりやすくなります。また、最近では古民家を活用したカフェや民泊など、空き家の利活用に関する需要も高まっています。こうした活用法に対応するためにも、建物がある程度良好な状態であることが大前提です。放置してからでは遅く、管理の有無が「将来の可能性」を左右するといっても過言ではありません。
近隣住民とのトラブルを未然に防げる
草木の繁茂や悪臭、害虫の発生など、空き家が原因で周辺環境に悪影響を与えることはよくあります。こうした問題が発生すると、近隣住民との関係が悪化し、場合によっては自治体への苦情や法的対応に発展することもあります。しかし、定期的に管理をしていれば、こうしたリスクは大きく減らせます。たとえその家に住んでいなくても、「気にかけている」「ちゃんと管理している」という姿勢が伝われば、周囲の信頼感も保てます。空き家管理は建物の維持だけでなく、地域とのつながりを円滑にするためにも重要な取り組みといえます。
将来的なトラブルや費用の発生を抑えられる
空き家を放置すればするほど、建物や設備は確実に劣化していきます。その結果、将来的に修繕費用が高額になったり、最悪の場合は解体が必要になったりと、予想外の出費を強いられることになります。しかし、定期的に管理をしておけば、小さな不具合を早期に発見できるため、大きなトラブルになる前に対処できるのです。例えば、雨漏りを早く見つけて修理すれば、構造部分へのダメージを避けられ、大規模な工事を回避できます。また、火災や倒壊などの事故リスクを下げることは、結果的に第三者への損害賠償など不測の出費を防ぐことにもつながります。空き家管理は「今の安心」だけでなく、「将来の損失を防ぐ保険」としての役割も果たしているのです。
相続した空き家の管理を委託するのが向いている人とは？
空き家管理は「自分でできる」と考えがちですが、いざ始めてみると想像以上に手間や時間がかかるものです。特に相続によって得た空き家は、遠方にあったり、日常生活に影響が出たりと、自力での管理が難しいケースも少なくありません。そうした背景から、近年は専門の空き家管理サービスを利用する人も増えています。では、どんな人が管理の委託に向いているのでしょうか？ ここでは、空き家管理をプロに任せるべきタイプの人について詳しく見ていきましょう。
空き家が自宅から遠くにある人
物理的な距離は、空き家を自分で管理するうえで最大の障壁になります。自宅から車で1時間以上かかるような場所にあると、定期的な訪問や清掃、点検は現実的に難しくなります。また、気候や季節によっては訪問そのものが負担になることも。そういった場合、空き家を放置せざるを得なくなり、気づかないうちに劣化が進行してしまうリスクも高まります。こうした状況にある人こそ、定期巡回や通風・点検などを代行してくれる専門サービスの利用が効果的です。プロに任せることで、遠距離でも安心して空き家を維持できるようになります。
忙しくて時間がとれない人
仕事や子育てなどで毎日が忙しく、「空き家を見に行く時間がない」という人も少なくありません。空き家管理は1回の訪問で終わるものではなく、継続的な対応が求められます。通風や換気、郵便物の回収、草刈り、外壁の点検など、やるべきことは意外と多く、時間がない中でこなすのは大きな負担です。そのまま後回しにしてしまえば、放置状態となって劣化や近隣トラブルの原因に。こうした事情を抱える人には、定期的に専門スタッフが対応してくれる管理サービスが非常に便利です。無理なく安心を得られる方法として、プロへの委託は現実的な選択肢といえるでしょう。
建物の劣化がすでに進んでいる人
すでに空き家の傷みが進んでいる場合、自分で対応するには知識や技術、道具が必要になることもあります。屋根や外壁にひび割れが見られたり、床が沈んでいたり、水回りから異臭がするような状況では、専門的な判断や早急な対応が不可欠です。このような家を自分で管理するのは、かえって危険やトラブルの原因となる可能性もあります。空き家の状態に不安がある場合には、まず専門業者による調査や点検を依頼し、その後の管理も任せることで安全性と安心を確保できます。特に築年数が古い住宅を相続した人は、委託管理を前向きに検討する価値があります。
空き家を将来的に活用・売却したいと考えている人
相続した空き家を「いつか使うかもしれない」「将来売却や賃貸に出すかもしれない」と考えている方にとっても、管理の委託は有効な選択肢です。長期間放置された空き家は、見た目の印象が悪くなり、資産価値が大幅に下がってしまうことがあります。特に売却や賃貸を視野に入れている場合、建物の状態は購入希望者や借主の判断に大きく影響します。定期的に手入れされている家は印象がよく、早期に良い条件で契約がまとまりやすくなります。今すぐ使う予定がなくても、将来の活用に備えて空き家を良好な状態で保つためには、専門の管理サービスを利用するのが安心です。