住んでいない空き家に「火事の心配なんてない」と思っていませんか? 実はそれ、危険な思い込みかもしれません。空き家は人の目が届きにくく、放火のターゲットになりやすいという現実があります。しかも、火災が発生してもすぐに気づかれにくいため、被害が拡大しやすいのです。もしも空き家から火が出れば、自分の資産を失うだけでなく、近隣の家にまで被害が及ぶ可能性もあります。所有者としての責任が問われることもあるでしょう。本記事では、空き家火災の実態や放火されやすい空き家の特徴、火災を防ぐための具体的な対策まで、空き家の火事リスクにまつわる知識をわかりやすく解説します。
空き家火災が発生する原因とは?

空き家の火災と聞くと、多くの方が放火をイメージされるかと思います。実際に空き家火災の原因として、放火はとても多い原因のひとつです。しかし空き家の火災は、必ずしも放火だけが原因ではありません。放置された空き家は、さまざまな火災リスクを内包しています。なぜ火事が起こるのかを理解しておくことで、より的確な対策が立てられます。ここでは空き家で火災が発生する主な原因を詳しく見ていきましょう。
放火・不審火による火災
空き家火災のなかでも特に多いのが、放火や不審火によるものです。空き家は住人がいないため、夜間でも灯りがつかず、人の出入りがないことから、犯罪のターゲットにされやすい傾向があります。特に、建物の周囲に枯れ草やゴミ、古新聞などの可燃物が放置されていると、火をつけやすい環境を自ら提供していることになります。また、窓やドアが壊れていて誰でも侵入できる状態であれば、いたずら目的や愉快犯によって火をつけられる危険も高まります。実際に、火災原因として「放火の疑い」とされるケースの多くが、無人の建物や空き家で発生しているのです。
電気系統からの出火
空き家に長期間電気が通っている状態のまま放置されていると、老朽化した配線やブレーカー、コンセントまわりから発火するリスクがあります。人が使っていないからといって安全とは言えず、むしろ使われていないことで異常が発見されにくく、重大なトラブルを引き起こす可能性が高くなります。また、ブレーカーを落とさず放置していた場合、雷による過電流や漏電などが原因で出火することも。特に古い木造住宅では、もともとの電気設備が現代の安全基準を満たしていないことも多く、火が出れば一気に延焼する危険性もあります。
自然発火や延焼
空き家に長年放置されている布団や衣類、紙類、あるいは油性塗料やスプレー缶などは、外気温や湿度、日光の影響を受けて自然に発火する可能性があります。とくに通気性が悪く、直射日光が差し込むような場所では、熱がこもって発火温度に達する危険性もあるのです。さらに、空き家そのものに火の気がなくても、周囲からの延焼により火災が発生することもあります。たとえば隣家の火災や近隣での野焼き、花火などが原因で火が移るケースもあり、無人であるがゆえに誰も対応できず、被害が広がってしまうという事例も報告されています。空き家はただの「放置された建物」ではなく、外部環境に対して無防備な存在だという意識が必要です。
不法侵入による火の不始末
人の気配がなく、出入り口が壊れていたり施錠されていなかったりする空き家は、不審者にとって「入りやすい場所」になってしまいます。子どもが面白半分で侵入したり、ホームレスや無断滞在者が寝泊まりしたりするケースも報告されていますが、彼らがたばこやたき火、ろうそくなどを使用した際の火の不始末が、火災の引き金になることがあります。特に冬場などは、空き家で暖を取ろうとして火を使うケースもあり、そこから火が燃え広がってしまうことも。これらの行為は違法であり危険なものですが、空き家の管理が甘いと不法侵入自体を防ぐことができません。
放火されやすい空き家の特徴とは?

すべての空き家が同じように放火のリスクを抱えているわけではありません。実は、火をつけられやすい空き家には共通する特徴があります。防犯対策を講じるためには、まず「どんな状態が放火犯に狙われやすいのか」を知ることが大切です。ここでは、放火リスクが高い空き家の代表的な特徴を紹介します。当てはまる空き家所有者の方は、注意が必要です。
周囲に可燃物が放置されている
空き家の敷地内に新聞紙、雑草、木の枝、古い家具、ゴミ袋などの可燃物がそのまま放置されていると、放火犯にとっては“格好の火種”となります。とくに枯れた草木や木製の廃材などは、ライターひとつで簡単に燃え始めてしまうため、狙われやすくなります。さらに、見た目が荒れていることで「ここは管理がされていない」という印象を与え、放火に限らず不法侵入や投棄行為を招くきっかけにもなり得ます。定期的な除草や不用品の撤去がされていない空き家は、それだけで火災リスクを大幅に高めてしまうのです。
夜間に真っ暗で人の気配がない
空き家は、夜間に照明が点かず周囲が真っ暗になることが多いため、放火犯からすれば「誰にも見られずに行動できる理想的な場所」となります。近隣に街灯が少ない場所であれば、なおさら人目につきにくく、放火を試みる心理的ハードルが下がると言われています。一方で、近くの住宅が多い場合でも、人の出入りがまったくない空き家は放火対象になりやすく、過去の火災事例では「周囲に住宅があるのに空き家だけを狙って火をつけた」というケースもあります。つまり、灯りや人の気配の有無は、放火を防ぐうえで非常に重要なポイントなのです。
施錠や防犯対策がされていない
玄関や窓が壊れたまま放置されていたり、施錠がされていなかったりすると、空き家に対する放火や不法侵入のリスクは一気に高まります。中に入ることが容易であるほど、火をつけたり、火の不始末を起こされたりするリスクも高くなるのです。とくに、敷地内に簡単に入り込める、ドアや窓が開きっぱなし、フェンスが壊れているといった物理的な防犯の甘さは、犯罪の呼び水になってしまいます。また、郵便物が溜まりっぱなしだったり、壊れた看板や雑草が目立つような外観も「誰にも気にされていない空き家」として放火犯の目を引く要素になります。
ゴミの不法投棄がある・されやすい環境
空き家の敷地内に不法にゴミが捨てられていると、そのゴミが火災の原因となることがあります。ゴミには紙や布、プラスチックなど燃えやすいものが多く含まれており、放火の火種として非常に危険です。特に、ゴミが一定量以上溜まってくると、「誰も片付けていない」「荒れている」と見なされ、さらにゴミを投棄されるという悪循環に陥ります。また、空き家の前の道路や周囲の空き地など、管理の目が行き届かない場所にあると、地域の人すら「この家は管理されていない」と認識し、不審者の目にも入りやすくなります。ゴミの放置は見た目の問題だけでなく、放火リスクそのものを高めてしまう要因になるのです。
空き家火災が発生したら所有者はどうなる?

「誰も住んでいないし、もし火事になっても他人に迷惑はかからない」と思っている方もいるかもしれません。しかし、空き家で火災が起きた場合、その責任は基本的に所有者にあるとされます。たとえ放火であっても、管理状況によっては所有者の過失が問われることも。ここでは、火災発生後に所有者が直面する可能性のある責任や影響について詳しく見ていきましょう。
損害賠償責任が発生する可能性がある
空き家火災によって近隣の建物や車両に延焼した場合、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任を問われることがあります。特に、火災の原因が放火だったとしても、「所有者が空き家を適切に管理していなかった」ことが原因で放火が容易になったと認定されれば、所有者の過失として賠償責任を負うケースもあるのです。たとえば、「施錠されておらず誰でも入れた」「ゴミが大量に放置されていた」「近隣から何度も苦情が寄せられていたのに対策していなかった」など、管理不十分と見なされる事情があると責任の範囲が拡大する可能性があります。こうしたケースでは、数百万円~数千万円規模の賠償請求に発展することもあるため、リスクは非常に深刻です。
行政から指導や命令を受けることもある
空き家火災が発生すると、火災原因の調査に加えて、行政による建築物の安全性や管理状況のチェックも行われます。もし「管理不全な状態が火災の原因になった」と判断されれば、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、行政指導や改善命令が下される場合があります。特定空き家に指定された場合、行政からの勧告・命令に従わなければ、強制撤去や罰金(最大50万円)などの措置がとられることもあります。また、空き家自体が焼失していても、土地の所有者として周囲の安全対策や残存物の撤去などを命じられるケースもあり、火災後の対応に追われることになります。
近隣トラブルや地域イメージの悪化につながる
空き家火災は、所有者自身の責任問題だけでなく、地域との関係にも影響を与えます。近隣住民にとっては「火災による恐怖」や「避難の混乱」「家屋や車の損傷」など、精神的・物理的な被害が伴うことがあり、所有者に対する不信感が一気に高まることも。さらに、ひとたび火災が起これば、メディアに報道されたり、地域の治安や住環境の悪化が懸念されたりと、周辺エリアのイメージダウンにもつながります。その結果、土地の資産価値が下がったり、将来的に売却や活用が困難になるケースも出てきます。つまり火災は、一時的な被害だけでなく、長期的な不利益をもたらすリスクがあるのです。
空き家を火災から守る方法とは?

空き家火災は所有者や周囲の住民に大きなリスクをもたらします。しかし、火災を完全に防ぐことはできなくても、火災のリスクを大幅に減らすことは可能です。空き家を火災から守るためには、日常的な管理と予防措置が不可欠です。ここでは、空き家を火災から守るために実施すべき対策を具体的に紹介します。
定期的な点検とメンテナンスの実施
空き家の火災リスクを減らすためには、まず建物の点検とメンテナンスを定期的に行うことが基本です。特に電気系統やガス設備は、老朽化や故障が火災の原因となることが多いため、専門家によるチェックを受けることが重要です。電気配線が古い場合、漏電や過電流による火災のリスクがあります。また、建物の外壁や屋根に穴が空いていないか、雨漏りなどの水害による影響がないかも確認しておくべきです。これらの問題が解決されていないと、火災の原因となる環境が整ってしまう可能性が高いです。最低でも年に1回は専門業者に依頼し、建物全体の点検を行い、問題があればすぐに修理や改修を行いましょう。
適切な防犯対策を講じる
空き家は無人であることを逆手に取って、放火を試みる犯人に狙われやすい場所です。放火を未然に防ぐためには、しっかりとした防犯対策を講じることが必要です。まず、空き家には必ず施錠をし、窓やドアが破れている場合は早急に修理しましょう。また、防犯カメラやセンサーライトを設置することで、不審者が近づきにくい環境を作り出すことができます。さらに、近隣住民との連携を強化し、空き家の異変に気づいた際にすぐに対応できるようにしておくことも防犯対策の一環です。空き家を管理する際には、外観のチェックも忘れずに行い、ゴミの不法投棄を防ぐために定期的な清掃を実施することも大切です。
可燃物の撤去と周辺の整理
空き家の周囲に可燃物が放置されていると、放火犯にとって格好の火種となります。特に、枯れた草や落ち葉、ゴミなどがあると、少しの火でも一気に火が広がってしまいます。したがって、定期的に敷地内を掃除し、可燃物を取り除くことが非常に重要です。また、庭や敷地内の樹木が大きくなりすぎている場合は、定期的に剪定して風通しを良くしましょう。これにより、万が一の火災でも火の回りが遅くなり、消火のチャンスを増やすことができます。可燃物がなく、周囲が整理されている空き家は、放火のターゲットになりにくく、火災を防ぐ一助となります。
火災報知器と消火器の設置
空き家でも火災報知器を設置することは必須です。たとえ人が住んでいない状態であっても、火災が発生した際に早期に発見できるように、火災報知器を設置しておくことが重要です。火災報知器は、火災を早期に察知し、周囲の住民や消防隊に通報する役割を果たします。また、消火器を空き家内に設置することも有効です。火災が発生した場合、初期消火が非常に大切であり、消火器があれば、初期段階で火を消すことができる可能性があります。消火器は定期的に点検し、使える状態を保つようにしましょう。空き家でも、これらの基本的な防火設備を整えておくことが重要です。
空き家の電気・ガスの遮断
電気やガスの設備が使用されていない場合でも、火災の原因になる可能性があります。特に古い配線や設備では、漏電や過熱などが火災を引き起こすリスクが高まります。空き家の場合、電源を完全に切っておくことをお勧めします。また、ガス管やガス機器もチェックし、使用していない場合は完全にガスを遮断しましょう。これにより、火災が発生するリスクを最小限に抑えることができます。特に空き家であれば、これらの措置を徹底することで、火災のリスクを大きく減らすことができます。
プロに管理を依頼する
空き家の管理を適切に行うためには、専門家に依頼することも一つの有効な手段です。自分で行うのが難しい場合や、時間や手間がかかる場合、プロによる管理サービスを利用することで、管理の質を確保し、火災リスクを大幅に減らすことができます。専門業者は、空き家の点検やメンテナンス、清掃などの作業を定期的に行ってくれるため、管理が行き届きやすくなります。特に、空き家の放置による火災リスクを防ぐためには、電気設備やガスのチェック、可燃物の除去、また防犯対策の設置などが求められます。プロの管理業者は、これらの作業を専門的に行い、効果的な防火対策を施してくれます。さらに、空き家の管理を任せることで、近隣住民に対しても「きちんと管理されている空き家」という印象を与えることができ、放火のターゲットになりにくくなります。また、空き家をプロに管理してもらうことで、万が一の火災時にも迅速な対応が期待でき、事故の拡大を防ぐ手助けとなります。