近年、空き家の増加が大きな社会問題となっています。少子高齢化や人口減少の影響で、使われなくなった家がそのまま放置されるケースが増えており、適切に管理されていない空き家は、さまざまなトラブルの原因になることがあります。特に、近隣住民との間で起こるトラブルは深刻で、景観の悪化や害獣の発生、不審者の侵入といった問題が発生することも少なくありません。空き家を所有している方の中には、「誰にも迷惑をかけていないから大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。しかし、空き家を放置することで思わぬ問題が発生し、近隣との関係が悪化することもあります。最悪の場合、行政から改善を求められることもあるため、適切な管理が欠かせません。本記事では、空き家が原因で起こる代表的なトラブルと、それを防ぐための対策について詳しく解説します。空き家の所有者として責任を果たし、安心して維持・管理するために、ぜひ参考にしてください。

空き家が引き起こす近隣トラブル

空き家を放置すると、さまざまな問題が発生し、近隣住民とのトラブルにつながることがあります。単に使われていないだけなら問題はないと思われがちですが、管理が行き届かないことで周囲の生活環境に悪影響を及ぼし、苦情や自治体からの指導につながるケースも少なくありません。ここでは、空き家が引き起こしやすい主なトラブルについて詳しく解説していきます。

景観の悪化による苦情が入る

管理がされていない空き家は、建物の外観が老朽化し、庭や敷地の草木が伸び放題になることで、地域の景観を大きく損ねてしまいます。特に住宅街では、「空き家があることで街全体の印象が悪くなる」と感じる住民も多く、自治会や行政に苦情が寄せられることもあります。また、庭や玄関先にゴミが溜まりやすくなることも問題です。放置された郵便物や飛散したゴミが目立つと、見た目が悪いだけでなく「空き巣に狙われやすい場所」として周囲に不安を与えます。さらに、家の一部が崩れたり塗装が剥がれたりすると、ますます廃墟のような雰囲気になり、地域の住環境の悪化につながります。

害獣・害虫が発生しやすくなる

人の出入りがない空き家は、ネズミやハト、アライグマといった害獣の住処になりやすく、繁殖が進むと近隣住宅にも被害をもたらします。特にネズミは屋根裏や壁の隙間に入り込みやすく、食べ物を荒らすだけでなく、電気配線をかじることで火災の原因になることもあります。また、湿気がこもることでゴキブリやシロアリが発生しやすくなるのも問題です。シロアリは木造住宅の柱や床を食害し、被害が広がると空き家だけでなく、隣家の建物までダメージを受ける恐れがあります。さらに、庭の草木が生い茂ると、ハチの巣が作られたり、ムカデやヘビが住みついたりすることもあり、周囲の住民が不安を感じる原因になります。

不法侵入や犯罪の温床になる

長期間人が出入りしていない空き家は、不審者やホームレスのたまり場になりやすく、治安の悪化を招くことがあります。特に玄関や窓の施錠が甘かったり、外から見て明らかに放置されているとわかる状態だと、不法侵入のリスクが高まります。また、空き家は放火のターゲットにもなりやすく、実際に全国各地で放火被害の事例が報告されています。特に、空き家の敷地にゴミや枯れ草が溜まっていると火がつきやすく、近隣住宅に被害が及ぶ危険性が高まります。さらに、空き家を利用した違法な活動（不法投棄や薬物使用など）が行われることもあり、地域住民にとって大きな不安要素となります。

建物の老朽化による倒壊・飛散の危険

長年メンテナンスされていない空き家は、老朽化が進み、屋根や外壁が崩れやすくなります。特に台風や地震の際には、瓦が落ちたり、建物自体が倒壊したりする危険があり、近隣住民や通行人が巻き込まれるリスクもあります。また、ベランダの手すりや窓ガラスが破損し、強風で飛ばされると、周辺の家や車に損害を与える可能性もあります。こうした事故が発生すると、空き家の所有者は損害賠償責任を問われることもあり、トラブルがさらに深刻化することがあります。

近隣住民との関係悪化

空き家が原因で発生する問題が続くと、近隣住民との関係が悪化し、苦情やトラブルが頻発するようになります。「管理がされていない」「危険な状態だ」といった理由で自治体に通報されることも多く、所有者が遠方に住んでいる場合でも改善を求められるケースがあります。また、空き家を放置することで、地域全体の防犯意識が低下することも懸念されます。特に子どもや高齢者が多い地域では、「治安が悪くなるのではないか」と不安を感じる住民が増え、地域のコミュニティに悪影響を及ぼすこともあります。結果的に、空き家所有者が住んでいる場所での評判も悪くなり、近隣トラブルがエスカレートすることもあります。

空き家の所有者が近隣トラブルを防ぐ方法

空き家が原因で発生する近隣トラブルを防ぐためには、適切な管理が欠かせません。しかし、実際に空き家を管理することになったとしても、具体的にどのように対策を講じればよいのか悩むこともあるでしょう。住んでいる家ではない場合、どの程度の管理を行えばいいのか判断が難しいこともあります。そこでここでは、空き家所有者が実践できる具体的な対策について詳しく解説します。空き家の具体的な管理方法を知りたいという方は、以下の内容を覚えておくと役に立ちます。

定期的な清掃と敷地管理を行う

空き家を適切に管理するためには、定期的な清掃と敷地内の手入れが不可欠です。特に庭や玄関先は人目につきやすいため、雑草の除去や落ち葉の掃除を怠らないようにしましょう。草木が生い茂ると景観を損ねるだけでなく、害獣の住処になる可能性もあるため、定期的な剪定が必要です。また、郵便ポストにチラシや郵便物が溜まっていると「この家は放置されている」と周囲に認識され、不法侵入や放火のリスクが高まります。郵便物の転送サービスを利用するか、近隣の信頼できる人に管理をお願いするのも一つの方法です。

害獣・害虫の発生を防ぐ対策を行う

害獣や害虫が発生しやすい環境を作らないことも重要です。特に、湿気がこもるとゴキブリやシロアリが繁殖しやすくなるため、定期的に換気を行いましょう。また、家の周囲に生ゴミや古い木材を放置しないことも大切です。ネズミやカラスが寄りつかないよう、不要なものは片付け、害獣が入り込む隙間がないか建物の点検も行うとよいでしょう。万が一、すでに害獣や害虫が発生している場合は、専門業者に依頼して駆除を行うのが効果的です。

侵入防止のための防犯対策を強化する

空き家を狙った不法侵入を防ぐためには、防犯対策を講じることが重要です。特に、玄関や窓の施錠を徹底し、鍵が壊れている場合は早めに修理・交換しましょう。また、侵入を防ぐために、センサーライトや防犯カメラを設置するのも効果的です。特に、一定の時間になると自動で点灯する照明を取り付けることで、「人が出入りしているように見せる」ことができ、空き巣や不審者の侵入を防ぐ効果が期待できます。近年では、スマートフォンと連携して遠隔操作できる防犯カメラも多く販売されているため、活用を検討してみるのもよいでしょう。

老朽化した建物の点検・修繕を行う

建物の老朽化による倒壊や破損を防ぐためには、定期的な点検と必要に応じた修繕が重要です。特に、外壁や屋根の劣化は、強風や地震の際に飛散する危険があるため、専門業者に依頼して状態をチェックしてもらうことをおすすめします。また、ベランダや雨どいが破損していると、雨水が建物内部に浸入し、カビや腐食の原因になります。定期的に点検を行い、必要に応じて修理や補強を行うことで、空き家の劣化を防ぐことができます。

空き家管理はプロの業者に依頼するのもオススメ

空き家を適切に管理するためには、定期的な清掃や点検、防犯対策が欠かせません。しかし、遠方に住んでいる場合や多忙で頻繁に通えない場合、自分で管理するのが難しいこともあるでしょう。そんなときは、空き家管理の専門業者に依頼するのも一つの有効な選択肢です。ここでは、業者に依頼するメリットや、管理業者の一般的なサービス内容について詳しく解説します。

定期的な巡回・清掃で放置による劣化を防げる

空き家を長期間放置すると、ホコリの蓄積や湿気のこもりが原因で、建物の劣化が進みやすくなります。プロの管理業者に依頼すると、定期的な巡回と清掃を行ってくれるため、建物の老朽化を遅らせることができます。特に、屋内の換気を定期的に行うことで、カビの発生や木材の腐食を防ぐ効果が期待できます。また、庭の草刈りや落ち葉の清掃もサービスに含まれている場合が多く、景観の悪化を防ぐだけでなく、害獣や害虫の発生リスクを抑えることができます。

防犯対策も強化され、犯罪リスクを軽減できる

空き家は、不審者の侵入や放火のターゲットになりやすいですが、管理業者に依頼することで防犯対策を強化することが可能です。例えば、定期巡回を行うことで、「人が出入りしている空き家」と認識され、不法侵入のリスクを下げることができます。さらに、一部の業者では防犯カメラの設置や、郵便物の回収サービスを提供しており、空き巣や不法投棄の防止にも役立ちます。こうした対策を取ることで、近隣住民にも安心感を与え、地域全体の治安維持にも貢献できます。

建物の異常を早期発見し、修繕対応も可能

空き家は、定期的に点検をしないと、雨漏りやシロアリ被害、外壁のひび割れなどに気づかないまま放置されることがあります。こうした住宅の問題が進行すると、修繕費用が高額になるだけでなく、最悪の場合、倒壊や周囲への被害につながることもあります。管理業者は、建物の異常を定期的にチェックし、異常が見つかった場合は所有者に報告するため、早期に対応できます。また、業者によっては修繕作業の手配も行ってくれるため、迅速な対応が可能になります。プロの業者に依頼することで建物の異常を早い段階で発見することができるようになるだけではなく、適切な修繕方法の提案や対応を行ってもらえるため、より空き家を安全に維持することができるようになります。

トラブル防止と管理負担軽減になる

空き家管理を業者に依頼する場合、当然ながら費用がかかります。料金は業者や提供するサービス内容によって異なりますが、一般的には月額数千円～1万円程度が相場です。しかし、これにより建物の劣化や近隣トラブルのリスクを軽減できるため、結果的に修繕費用やトラブル対応の負担を減らせる可能性があります。また、自分で管理する場合は、移動時間や作業の手間がかかるため、遠方に住んでいる人や忙しい人にとっては、業者に依頼することで時間と労力を節約できるというメリットもあります。さらに、万が一隣人トラブルが発生した場合でも、第一窓口として業者が対応してくれることも多く、トラブルが悪化することを防ぐことにも役立ちます。