日本全国で急速に進む空き家問題。2020年には全国におよそ830万軒もの空き家が存在し、その数は年々増加しています。しかし、一口に「空き家」と言っても、その種類や状態は実に多様です。なかには老朽化して取り壊しが必要なもの、地域活性化のために再利用可能なもの、または相続後に放置されたままの住宅もあります。現に自宅の近所で空き家を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。空き家は親からの相続や転勤などの事情で、突然自分が所有者になることもある意外にも身近な問題です。そこで今回は、社会が抱える空き家問題をより理解するため、まずは身近にある空き家の実態について一緒に確認していきましょう。また空き家の種類別の管理方法なども記事下部で解説をしておりますので、空き家の所有者の方もぜひ参考にしてみてくださいね。
日本にある空き家の種類

空き家にはさまざまなものがありますが、一体どんな種類があるのでしょうか。普段なんとなく見ている建物が、どんな空き家なのか、なかなか考える機会はありませんよね。しかし空き家が与える地域への影響は大きく、空き家の所有者になった場合は、周囲の配慮も重要となります。そこでまずは、空き家に対する理解を深めるために、日本にある空き家の種類について一緒に見ていきましょう。
住宅用に使われていた空き家
住宅用空き家は、最も一般的なタイプで、転居や長期間の不使用により、個人の一戸建てやマンションが空き家となるケースです。転勤や引越し、結婚などで元々住んでいた人が引っ越したり、高齢者が介護施設に入ることなどが原因となります。また、相続後にその家に住む意思がない場合も多く、空き家として放置されることがあります。この種類の空き家は、親族や自分が住宅を所有していると、誰にでも起こり得る問題です。比較的新しい住宅が多く、リノベーションや再利用の可能性は高いものの、適切に管理されていないと老朽化が進んで修繕が必要になることもあります。さらに、相続問題や固定資産税の負担が空き家の所有者にとって大きな課題となり、空き家をそのまま放置していると治安や周辺環境に悪影響を与えることもあります。
田舎や地方の空き家
地方や過疎地に多く見られるのが、人口減少や高齢化が進んだことにより空き家が増加したケースです。これらの地域では、住む人がいなくなり、家が空き家になることが多く、特に高齢者が施設に入ったり、都市部へ移住したりすることが原因です。こうした地域一体の環境によって発生してしまう空き家の多くは、住宅が古く、修繕が必要な場合が多いですが、移住者や地域活性化のために再利用されることもあります。しかし、これらの地域は経済的に活性化していないことが多く、空き家の維持や管理が難しいという課題があります。また、空き家を活用するための支援や施策が十分でない場合もあります。元々住宅用に所有していた空き家が人口流出地域にあると、近い将来こうした地域一体の空き家問題の当事者になってしまうことも考えられます。
空きビルやアパート
商業用や集合住宅として使用されていたビルやアパートも、需要の低下により空き家となることがあります。都市部では、企業の移転や縮小によりオフィスビルが空き、またマンションやアパートでも人口減少や転居によって空室が増えている状況です。商業用ビルはリノベーションして新たな用途に転用することが可能で、カフェやオフィス、シェアハウスなどに変える事例もあります。また、アパートも一部を賃貸として再利用できる可能性が高いですが、老朽化したビルやアパートは維持管理が非常に高額になる場合があり、再利用の難しさが課題です。特に都市部の空きビルでは、人口の減少や賃貸市場の縮小が問題となり、リフォームや賃貸化の難しさが影響してしまうこともあります。投資の一環としてビルやアパートを所有している方もいらっしゃるかと思いますが、思うように売却や賃貸で回せなくなってしまった場合、空き家になるリスクがあります。
老朽化した空き家
長期間使用されずに老朽化が進んだ空き家は、構造的に危険な状態にあることが多く、生活することが難しくなっています。これらの家は、外観や内装が傷んでおり、屋根や壁が腐食して雨漏りが発生したり、シロアリ被害を受けていることもあります。老朽化が進んだ空き家を放置しておくと、倒壊のリスクが高まり、火災などの危険が生じることもあります。修理やリフォームを行うためにはかなりの費用がかかり、そのために解体が選ばれることもあります。老朽化した空き家は、周囲の安全や景観に悪影響を与えるだけでなく、固定資産税や管理費が負担となることが多く、早急に対処が求められます。一方で、老朽化した空き家は築年数が古く所有者があやふやになってしまっている場合も多く、所有者との連絡の取りにくさも問題視されています。
空き家を放置するリスク

空き家には実はさまざまな種類、そして空き家になるまでの背景があるということを、知っていただくことができたかと思います。空き家と聞くと田舎山奥にあるような一軒家をイメージされる方も多いですが、どの地域に合っても空き家になることはありますし、適切な管理ができていなければ地域の危険として問題視されてしまうこともあります。では、具体的に空き家を放置することでどのようなリスクがあるのでしょうか。空き家の所有者が抱えるリスク、地域住人が抱えるリスクの両方の立場から空き家を放置することで発生するリスクについて解説していきます。
老朽化による安全面のリスク
空き家を放置すると、建物が老朽化していきます。特に長期間使用されていない家は、屋根や壁の劣化、腐食、シロアリ被害などが進行し、物理的に非常に危険な状態に陥ることがあります。屋根が崩れ落ちたり、壁が剥がれてしまう可能性があり、周囲に落下物が発生するリスクや、近隣住民が危険にさらされることもあります。また、地震や大雨などの自然災害が発生した際には、倒壊や浸水などの被害を引き起こす原因になりかねません。安全面のリスクは、最も重要な問題の一つです。
治安や周囲の環境への悪影響
空き家は、治安の悪化にもつながる可能性があります。放置された家は不法侵入者や犯罪者が入り込みやすく、犯罪の温床となることがあります。例えば、空き家に放火されるリスクや、住民がいないために窃盗や不法占拠が行われるケースが増えることもあります。また、空き家がそのまま放置されていると、近隣住民が不安を感じるようになり、地域の治安や生活環境が悪化することがあります。空き家が集まるエリアでは、地域の評判にも影響を与え、住みづらくなることも考えられます。
税金や経済的な負担
空き家を放置すると、税金面での負担が増える可能性があります。特に固定資産税は、土地や建物を所有している限り支払わなければならず、空き家にしているとその負担が続きます。加えて、老朽化した空き家の修繕費用や解体費用がかかることもあります。放置していると、修理や管理がさらに難しくなり、最終的には大きな経済的負担が重くのしかかることになります。空き家にかかる維持費用は、時間とともに増加するため、早期の対応が必要です。
社会問題や地域活性化の阻害
空き家が増加すると、それが地域の活性化を阻害する要因にもなります。特に過疎地や地方都市では、空き家が増えることで地域の人口減少が加速し、さらに活気が失われてしまいます。また、空き家は地域の景観にも悪影響を与えることがあります。放置された家が周囲の景観を損ない、地域全体の魅力を低下させる可能性が高く、観光や移住促進にも悪影響を及ぼします。空き家問題に対する対策が進まないと、地域の衰退が進行し、コミュニティ全体に深刻な影響を与えることになります。
健康リスクの増加
空き家は、放置されることで害虫や動物の巣となることがあります。特に、シロアリやネズミ、ゴキブリなどが繁殖しやすい環境となり、これらが周辺に広がる可能性があります。害虫や動物の存在は、健康リスクを引き起こす原因となります。例えば、アレルギーや呼吸器疾患の原因となるダニやカビが繁殖することもあります。こうした問題が発生することで、近隣住民にとっても健康面でのリスクが増えるため、空き家の放置は一層の注意が必要です。
空き家の所有者になったらやるべきこと

空き家を放置することで、さまざまなリスクがあることを知っていただくことができたかと思います。では、実際に自分が空き家の所有者になった場合、先ほどあげたようなリスクを避けるためには一体なにをすべきなのでしょうか。ここでは、もしあなたが空き家の所有者になった場合にどんなことをすべきかを詳しく解説していきます。また、今現在空き家の所有者でなにをすべきか分からず困っているという方にも参考にしていただけますので、今お困りの方もぜひこれからご紹介する内容を参考にしてみてくださいね。
空き家の状態を確認し、必要な修繕を行う
まず最初にやるべきことは、空き家の現状を正確に把握することです。屋根や壁、基礎、配管など、建物の構造に問題がないかチェックし、老朽化が進んでいる場合には早期に修繕を行いましょう。特に長期間放置された空き家では、シロアリやカビ、腐食などが発生しやすく、これらが進行すると修理費用がかさみます。早期のメンテナンスが、後々の大規模な修繕を避けるためにも重要です。
税務署に届け出を行う
空き家を所有している場合、税務署への届け出が必要となる場合があります。特に、空き家の固定資産税はそのまま支払う必要がありますが、特例措置を受けられる場合もあります。たとえば、空き家を相続した場合は、相続税や土地にかかる税金の優遇措置を受けることができることもあります。税務署に確認し、必要な手続きを速やかに行うことで、不要な税負担を避けることができます。
空き家の管理·維持を計画する
空き家を所有していると、その管理·維持が重要な課題になります。特に、長期間放置しておくと、建物の劣化や害虫·害獣の侵入、ゴミの不法投棄などが問題になることがあります。定期的な清掃や庭の手入れ、空き家の点検を行うことが必要です。管理を業者に依頼することも一つの方法ですが、空き家が放置されないよう、オーナーとしての責任を果たすことが大切です。
空き家を活用する方法を考える
空き家をどう活用するかも、所有者としての大きな選択肢の一つです。売却や賃貸、リノベーションをして自分で住むことも考えられます。もし賃貸として活用する場合、家賃収入を得ることができますし、リノベーションを行ってシェアハウスやカフェ、民宿などにすることもできます。地域活性化に貢献することもできますし、空き家の価値を再生させることができます。また、売却する場合は、空き家バンクなどの活用を検討するとよいでしょう。
空き家の所有権や相続に関する問題を整理する
空き家が相続によって所有者の手に渡った場合、相続に関する問題を整理することも必要です。相続人間での分割問題や遺産の扱い、空き家の管理責任が曖昧になっているケースがよくあります。所有者が決まっていない場合や、遺産分割が未了の場合は、法的手続きを進める必要があります。こうした手続きは専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
地域社会や自治体と連携する
空き家の管理には、地域社会や自治体との連携が重要です。空き家問題を抱える自治体は増えており、特に地方では空き家対策を強化している地域もあります。自治体に相談することで、空き家活用のための助成金や支援策を受けることができる場合もあります。また、地域住民とのトラブルを避けるためにも、空き家の管理をしっかり行い、周囲に迷惑をかけないよう心掛けましょう。
空き家を解体する場合の手続きを行う
もし空き家を解体する決断をした場合、解体工事の前に自治体に届け出が必要となることがあります。解体することで土地を売却したり、再利用したりすることが可能です。解体費用がかかるため、必要な費用を事前に確認し、業者に見積もりを取ることが大切です。また、解体後の土地の利用方法についても考え、どのように再活用するかを検討するとよいでしょう。